華麗なる業師!ノコギリクワガタ
実はクワガタの種類によって樹液場での主な戦闘スタイルは異なります。
ミヤマクワガタのオス同士だと、「強く噛んだ方」が勝ちといった具合です。
スリムな体形のノコギリクワガタですが、湾曲した大あごで相手を挟みこみ、投げ飛ばすテクニシャン。
昆虫の王者カブトムシには分が悪いですが、日本のクワガタの中では樹液場で最強クラスの占有力を持っています。ミヤマクワガタと生息域が重なる場所では同じくらいの大きさの場合、大抵はノコギリクワガタに軍配が上がります。コクワガタが身近にいることが多いのに比べると、都会ではレアな部類に入るクワガタです。生息場所を見つけられたらラッキーですね!大あごの形から「水牛」と呼ばれる地域もあります。
ノコギリクワガタの生態
体長:
♂32~74mm程
オスは大きさによって、大あごの形が大きく異なる。
赤褐色の個体が多いが、稀に黒色の個体もいる。
♀25~38mm程
赤褐色で全体的に丸っこい。
生態:
成虫は5月下旬~9月頃にクヌギ、コナラ、ヤナギ、シラカシ、ニレ、イタヤカエデ、ハンノキといった広葉樹の樹液に集まる。河川敷のヤナギの木などでも多く見られる。個体数は減るが、10月初旬ごろまで野外で観察することができる。生息地域はコクワガタに似るが、コクワガタより大型なぶん、コクワガタよりは大規模な生息環境を必要とすると考えられる。個体数のピークは6月中旬~7月中旬頃。個体数は比較的に多く、1000m程の高標高の場所でも生息が確認されており、環境への適応力は高い。
地域により日中にも活動することがある。休んでいる時は樹上や樹の根元に潜んでいることが多い。木に振動を与えると、手足を縮めて擬死行動をとり、落ちてくることも多い。
メスは広葉樹の切株や倒木に産卵し、幼虫は朽ち木の中で大きくなり、蛹になる前に朽ち木から土中に脱し、土中で蛹となる。幼虫は他のクワガタより水分を含んだ場所を好む傾向がある。晩夏に羽化した新成虫は蛹室で越冬し、翌年の初夏に活動を開始する。
分布:
北海道・本州・四国・九州・佐渡島・伊豆諸島。
寿命:
蛹室を脱出した後の成虫の寿命は数カ月。10月頃まで姿が見られる時もあります。
飼育下ではもう少し長生きで、12月を越して、翌年の初夏まで生きていた例もあります。
ノコギリクワガタの主な採集(観察)方法
・6月~8月に夜間の樹液採集。地域によっては日中にも活動することがある。
・6月~8月に生息地の木をキックして振動で落ちてくるノコを拾う採集方法(キック採集は早朝にやると確率が高くなります)
・6月~8月に夜間、灯りに飛んできたものを拾う灯火採集やライトトラップ。灯火採集は19時~22時の間に飛来することが多いです。灯火採集ではメスが飛来することが多いです。ノコギリクワガタはスリムな体形のためか飛翔能力が高く、大型のオスが飛んでくる確率が他のクワガタよりは高い気がします。
ノコギリクワガタの飼い方
クワガタは飼育用品も豊富。
ここでは簡単なノコギリクワガタの飼い方をご紹介します。
1ペアを飼うのを想定して
(クワガタは基本的に1つのケース1ペアで飼います。狭い空間でそれ以上飼育すると、ケンカして弱ってしまうのでおすすめできません。)
*ノコギリクワガタは闘争心旺盛な種類です
必要なもの
・中ケース程のケース(横300×奥行195×高さ205ミリ)
・広葉樹のマット3cm~15cm程
・エサ(ドルクスゼリーなどのゼリータイプが使い勝手が良いです)
・棲家となるような木
・霧吹き(水分補給などに)
これくらいでしょうか。
飼育下では、5~10月の活動期には2~7日に1度ゼリーを交換してあげたり、霧吹きをしたり、排泄物の掃除をしたりと
そこまで手はかからないのではないかと思います。
マットは適切な水分保持の役目があり
ちょっと水分を含むくらいにしておきます。(水分が多過ぎてもだめです)
産卵させる場合
ノコギリクワガタは比較的に容易に産卵させることができます。
柔らかめのシイタケのホダ木によく産卵します。樹種もコナラでもクヌギでもOK。
産卵木の樹皮はむいた方が良いです。
産卵させる場合、広葉樹のマットを7cm以上固く詰めることで、ノコギリクワガタは産卵木がなくても産卵する種類です。
産卵の手順として
1.ペアリング。5~8月に羽化後2~3カ月以上たったオスとメスを2~3週間一緒のケースで飼う。(羽化後、間もないと体が成熟しておらず、産卵しない。野生で採集したメスは交尾済みのことも多い)
2.産卵木となるホダ木を入れて(ペアリングする時から入れていてもOK)マットに完全に埋める、もしくは3分の2程埋めます。マットの厚さは10cm以上ある方が望ましい。
*ホダ木は2~3時間水につけて数時間~半日程陰干しして適度に乾かしたものを使います。水分を含み過ぎていても、乾燥し過ぎているのもよくない
3.メスはやがて産卵木に穴を空けたりして、産卵に入ります。
(卵は10~20個程産むことが多いです)
4.産卵木をセットしてから(産卵してから)1ヵ月半~2ヵ月半程したら産卵木に幼虫がいるはずなので、産卵木をドライバーなどで割って、幼虫を取り出し、幼虫飼育用の容器に入れます。
*産卵木をセットしてから1ヵ月~1ヵ月半程したら産卵木を取り出し、取り出した産卵木を広葉樹のマットなどにうめこみ1ヵ月程経ったら割り出す方法もオススメです
5.幼虫飼育は、菌糸瓶飼育、マット飼育など、いくつかの方法があります。概ね1L程の容量があり、蛹を作るスペースが充分にある容器で飼育します。幼虫は多くは1~2年で蛹になり、羽化します。
今回は業師!ノコギリクワガタの生態と飼い方の紹介でした。
カッコ良い大アゴを持ったノコギリクワガタ
子ども達からの人気も高く、夏の雑木林の主賓です。